Love’s diary

偏愛、寵愛、やっぱり最愛。

「戦えるヤツ」

プレイオフですね。連日盛り上がる悲喜交々のタイムラインが私をわくわくさせます。

昼間、フォロワーさんのツイートを拝読しました。
本当にその一文に尽きる、と思います。

レギュラーシーズンの活躍から、またはその選手から抱く印象……を、そのままもしくはそれ以上に魅せてくれる選手もいれば、残念ながら裏切る選手もいれば、また逆の嬉しい意味で裏切ってくれる選手もいます。

レギュラーシーズンとプレイオフは似て非なるもの。もちろん82試合という長い長いシーズンを乗り越えた選手には一定の敬意を。何位であれ辿り着いたチームには尊敬を禁じ得ません。

気になるのはもちろん、最愛の選手が「戦えるヤツ」であるかどうか。ケビンラブはプレイオフプレイオフらしく、戦って戦い続け戦い抜くことができるかということです。というかそれにしか関心はほぼ無いとも言う、ね。

スタッツ上では、戦えている現在、と言えるかもしれません。

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こんな感じ。
Kevin Love's stat line 
through 3 playoff games(2015-16RS)
21.3 PPG(16.0)
11.7 RPG(9.9)
47.8 FG%(41.9)
詳しいスタッツ語りはTwitter的には女性は担当外のようだし、その筋の方にお任せ致します(笑)。ただ、スタッツだけでは測りきれないのがバスケットでありスポーツであるということはいくら贔屓目の私でも忘れてはいません。

プレイオフは長いようで短い、4戦先勝勝負です。幸いにもケビンラブ所属するキャブズはレギュラーシーズンの順位でホームコートアドバンテージを得てはいますが、1つ負けることは先々の戦いにおいて非常にリスクを伴います。レギュラーシーズンでの決定順位が何位であろうと、ひとたび油断すれば勝利を手繰り寄せることのできるチームばかり。ましてやバスケットは大量に点の入るスポーツですから、どの組み合わせであろうと下位が上位を食うアップセットは起こり得るものです。

ケビンラブはキャブズの主力選手の1人です。そうでなければならず、そうあるためにトレードを経て今現在のチームにいます。ロスター内の一選手という位置付けだけではありません。何が言いたいかというと、気を抜いたプレーは決してできないということ、ラブの油断はチームにおいて重大な瑕疵であり、常に戦えるヤツであることを義務付けられていると言えるということです。

さてここでもう一度私は私が見たケビンラブはその「ヤツ」なのかということを自分に問いかけます。彼は戦えているか。

答えは簡単ではありません。厳しい目を持つタイムラインの皆さんは否と即答するかもしれません。また、私もいつものテンションで「可愛いから」と全てを肯定することもやろうと思えば出来ます。期待と信頼のみで前向きな答えも出せます。

3試合見た限りでは、ケビンラブは「まだ」です。まだ、足りません。気持ちも伝わります。数値的な結果もそれなりに出てはいます。でも、まだ、足りません。

プレイオフデトロイト3戦目、ラブはシュートを迷った場面がありました。膠着気味の展開の中で、思うように得点を重ねていけなかった時間帯です。その時間帯のタイムラインでは何人かがその迷いに気がつきました。

ラブは心に弱気の虫を飼っています。もちろんそれは人間はほぼ誰しも嫌でも飼っているものですが、良くも悪くも素直な性格のラブはNBAでスターターを張っている選手の中では非常に分かりやすくそれが垣間見える選手です。

レギュラーシーズン中はそれが何度も顔を出しました。NBA入りする頃、いやもっとその前から、もしかしたらバスケットを習い始めた頃に立ち返っても初めてかもしれない、ラブにとってはディフェンス力を要求されたほぼ初めてのシーズン、心を何度も折られるそのプレーの不味さに引っ張られ、オフェンス力までもが消えてしまうこともありました。

ここまで書くと語弊があるかもしれませんが、弱気の虫はこのシーズンで培われたわけではありません。UCLA時代は見た限りではその片鱗はほぼ見えません。

勘のいい方は私の言いたいことが予測がつくと思います。弱気の虫は前所属チームで育ちました。これはずっと私が思っていたことです。柵が怖く覚悟が足りず書けなかったことですが、言いたくなりました。

長いミネソタでの、ウルヴスでのクソみたいな6年間でそれはそれなりに育ちやがりました。

クソもクソです。153勝-323敗。これがラブがミネソタティンバーウルヴスにいた6年間の戦績です。スターターでないルーキーシーズンがあり、ロックアウトの年があり、また怪我がありほぼ出場していない5年目などもありますが、これが所属していたチームの戦績であることは事実です。

キャブズ…クリーブランドキャバリアーズでは2年目になりました。戦績は110勝-54敗。来年もそれなりに戦えば以前の勝利数を抜く計算までもが成り立ちます。

ああ、とても腹立つ言い方。でもまあ、ここまで来たならそっ閉じしないで。ね。もう少しだから。

言いたいことは色々ありますね。一概に簡単に言うなと思いますよね。だってゴリラいるし、とか。でもクソみたいに勝てなくてクソみたいに弱いチームにいたのです。いたんですよ。どんなにリバウンドが素晴らしくてもね。

思えば本当に。新人王は逃し、出ても負け、リバウンド王になっても、30-30を達成しても、プレイオフは夢のまた夢、頻繁なトレード、自身の怪我、チームメイトの怪我、怪我、怪我…思わず溢れる愚痴に群がる記者達。

これをクソと言わないで何と言う。 

そう。ドラフト5位と期待され、寒い街の温かい人々に歓迎され、どんなに負けてもアリーナに足を運んでくれる方がいて。ただひたすらに点を獲る事を望んでもらえ、ダブルダブルの記録に歓喜の声が上がり。

本当にクソみたいな日々、憧れのマクヘイルの指揮を学び、アルジェファの背中を追い、若きラテンのスタープレーヤーだったルビオが来て、友となるペックとインサイドを支配し、キリレンコと共に、ビーズリーと共に、アリーザと共に、バレアと共にプレーした、あの日々。

勝率五割を、プレイオフへの出場権を、誰よりも夢見ていたあの日々、ずっと此処で、此処にいてのし上がって、いつまでもいつまでもフランチャイズプレーヤーとして、ミネソタの選手でいると信じて疑わなかったあの日々。

今でこそワイン&ゴールドの権化のような顔をしてTwitterをしている私ですが、以前はもちろん森の奥の狼さん達のひたすらの無事を祈り続けていたのです。私のBIG3がルビオ、ラブ、ペコビッチだった日々は決して消えることなくそれは確かにあったのです。

このクソみたいに幸せな、けれども勝てなかった日々は、ラブの心にいつまでもいつまでも残っています。

ここで勝てないのか、という経験をラブはし過ぎました。それはもう麻痺するほどに。もがき苦しみ、もちろん素晴らしいこともたくさん、たくさんたくさんあったのだけれど、結果として負けたことは彼に勝ち癖を残していません。

私はタンク的に上位ルーキーが何年も負け続ける環境はあまり好みません。大した記憶力はないのですが、ババアになって思うのは、ああ、この選手いい選手だったけど勝ちに恵まれなかったよね、という選手がたくさんいる一方で、それよりもどんな理由であれトップになった選手が評価されていくのを嫌というほど見てきました。

もちろんフランチャイズプレーヤーとして優勝し、引退していくのは素晴らしいことで、それは夢です。しかし、ラブは多分理解しています。自分がマイケルジョーダンでも、コービーブライアントでも無いことを。

それを味わった6年間なのかもしれません。愛着のあるチーム、慣れ親しんだ場所、居心地の良いスタイル、本来の食事習慣、サイズ不足ながらフィジカル的に対抗できた体重、それらの多大な犠牲を払って、彼は明日もまた、プレイオフのコートに立つでしょう。

負け続けた日々のことを決して忘れてはいないでしょう。不甲斐ない自分のことも、不用意な発言も覚えているでしょう。そして同時に、あれほど愛され慕われ、信じてもらえた街のことを決して忘れてはいないでしょう。

また勝てない、負け続けた記憶は、既に思い出になったはずなのです。クソみたいに最低で幸せで最高だった日々は、苦くて甘酸っぱい思い出になったはずなのです。

ラブは真摯で勤勉です。自暴自棄になることのないプレーヤーでいるはずです。今までにあったことの全てが無駄でなく、糧にして成長していくことのできる選手です。何もかも飲み込んで、包容して、育っていけるはずです。私はラブのそういう部分に何より惹かれているのです。

これからも、時折、弱気の虫は出てきそうになるのだと思います。その時は抑えつけず、そして殺すことなく、孵してほしいのです。もう少し、です。あと少し。

「戦えるヤツ」だと、確信したとき、迷いも思い出も、美しい蝶になります。その瞬間を見守るために、今日も生きます。

昨年、不本意な形でプレイオフの舞台から去ることになったあの凄惨な出来事から、今日でちょうど一年が過ぎました。嫌な記憶しか無かった3戦目は、無事勝利で終えました。





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Mayuさん、ツイートの掲載許可をありがとうございました。書くきっかけをくださり感謝します。